【工具鋼Gr.】浦崎グループマネージャー
工具鋼Grの仕事を教えてください
主に金型の仕事をしています。金型と言ってもイメージし辛いと思うので分かりやすく例えると、「たい焼きの生地を流し込んで焼く、黒っぽいのが金型ですよ」という説明をします。
自動車産業や、その他FA(ファクトリーオートメーション)含めた機械装置など様々な場面で金型は使われています。日本のものづくりにおいて不可欠とも言える、金型の材料供給及びその加工の注文を取ることが主な仕事です。
当社の金型の材料である「YSSヤスキハガネ」は島根県の安来市で生産されていますが、これは有名なアニメ映画にも出てくる日本の古代製鉄法の「たたら」と関わりがあります。そのため、日本古来から脈々と受け継がれたもの・技術に携わっていると感じています。
どのような場面で世の中の役に立っていますか?
身近なものでいくと、自動車のタイヤのホイールは“鋳造”という方法で作るのでその鋳造用の金型や、スマホケースの金型などがあります。
今、電動自動車(EV)が流行っていますが、その中にモーターという回転する部品があります。
EVのモーターは、打ち抜き成型された非常に薄い穴の空いた板を何十枚と重ねてその穴の中に永久磁石を入れて作られます。多くの枚数を重ねる必要があるため、1枚1枚の精度が穴を含めてすごく厳しいんです。
精度が厳しい製品を作るためには、当然金型に求められる精度も厳しいので高精度の加工や熱処理技術が必要となります。当社はそれらを保有しているので、EVをはじめとした高精度な分野で世の中の役に立っていると思います。
また、昨年ついに当社が開発・製造したフィギュアスケート用のブレード「YS BLADES」がオリンピックデビューしました。ブレードの刃の部分も当社が扱っている金型用の材料を社内の機械加工で製品として仕上げており、選手の足元を支えています。
この部署の仕事で海外と関わることはありますか
当社のグループ会社としてYSV(Yamaichi Special Steel Vietnam Co.,Ltd.)という工場がベトナムにあります。そこには機械加工と熱処理設備があるので、YSVで加工し日本に輸入してお客さんに販売することもあります。
まさしくミニ山一といった会社で、当社のお客様がベトナムに進出された場合も、YSVからサポートが可能です。またコロナで一旦中断していたYSVとの交流が再開していて、相互に人を送り合い技術交流をしている部署もあります。
現地だけだとなかなか教育もできないので、来日してもらい教育をしたり、逆に日本からベトナムへ行って教育をすることもあります。その中には人材確保の意味もありますが、人の行き来で海外とも関りがあります。
YST(Yamaichi Special Steel Thailand Co., Ltd.)は販社ですね。倉庫を借りて事務所は別の所で構えていて、事務所から倉庫の方に連絡をして配送してもらいます。
一部現地の材料や中国から輸入した材料などもありますが、基本的には日本から輸出しています。生産材がメインですが、工具鋼の販売もしていますし、加工品もあるのでまったく繋がっていないわけではないんです。タイがベトナムに仕事を依頼するなど海外同士でもリンクしていますし、営業活動の中でも積極的に連携しています。
これからどのように会社を成長させたいですか?
これだけ変革が早いですからね。車ひとつ取っても、ついこの間までは化石燃料車と言ってたのがハイブリッド、ハイブリッドがバッテリーEVなど、主要な産業も目まぐるしく変化します。
半導体関係についても、日本から1回出たものが再度国内でもやらないといけなくなり、熊本に台湾の半導体メーカーを誘致して生産するとか、いつ何がどう変わるか分からない状況です。
その変革に柔軟に対応できる会社でないと成長できないし、社会に取り残されます。
当社はもうすぐ100年を迎えるので、100年、200年と継続して社会貢献し続けるために、変革に柔軟に対応しながら成長したいと思います。
EVシフトは、現行のガソリン車の部品点数が激減する変革の時です。前述の通りEVのモーターは要求される精度が非常に厳しく、その金型はどこでも加工できる案件ではありません。
これは当社の持つ超高精度加工技術と、その精度を担保する検査装置があって初めて可能なことで、EVの普及は更なるチャンスだと思っています。今ある仕事はおのずと減ってくるので、伸びるところを取らないとね。
また、当社は素材提供からフライス・熱処理・金型部品の製造・配送までワンストップで対応可能なファクトリーモール機能が備わっています。同じ敷地内に上工程から下工程までの機能が備わっているのは、おそらく当社だけではないでしょうか。
そこに自動車や産業機械の部品などを取り扱う生産材も加わるのが当社最大の売りだと考えていますので、今後は各事業間の連携が成長の鍵になると見ています。
子育てと仕事の両立はしやすいですか?
工具鋼グループだけでなく、会社全体で育休以外にも、介護休暇や女性活躍支援など色々取り組んでいるので、制度が一通り揃っていますよね。
メリハリつけてやりましょうといった雰囲気も醸成されているので、過去と比べれば取得しやすいと思います。家庭をすごく大切にしている人もいれば、自分の趣味を大切にしている人もいるので、本人次第な点もあるよね。
ただ、制度があるから育休自体を取りやすいかというと、余力の問題もあり今のままの人員で急に言われると正直まだ厳しい面はあります。その場合は、どれぐらいの期間取得したいかを前もって相談してもらえれば柔軟に対応はできると考えています。
※この記事は取材当時の内容であり、現在の情報とは異なる場合があります。