山と海の物語<後編> -北海道機販ってどんな会社?-


【北海道機販株式会社】

取締役 総務部長
鈴木淳也

総務部副部長
梅田雅人

総務部担当課長
土場友加里

機販は創業当時から地域社会に貢献

同社は、1950年代に北海道に進出した電気設備資材販売会社の北海道出張所が原点だ。
当時の北海道では、開発庁の設置や人口増加に伴う住宅・施設建設が進み、電線や関連資材の需要が急増。これに対応するため、電線ケーブルや設備資材の供給を事業の中心に据えた。
その後、日立グループの特約店としてメーカーと連携しながら、地域密着型の営業活動を展開、商材やサービスの幅を広げていく。


同社の歴史を築いてきた中鉢社長(左)と伊藤顧問(右)


その後、事業は北海道全土へと広がり、地域社会に根ざした営業活動を通じて信頼と基盤を築き上げていく。
北海道の「地元企業を大切にする文化」は、同社の営業スタイルと親和性が高く、製品やサービスの提供を通じて地域社会のインフラを支え続けている。


機販の事業は北海道の暮らしを支える原動力

同社の事業は、主に「電気設備資材の販売事業」と「エンジニアリング事業」の2つに分かれる。

①電気設備資材の販売事業

電気設備資材の販売事業は、北海道民の暮らしに欠かせない役割を果たしている。
顧客は、電気工事を担うサブコン(SubContractor:電気関連の専門工事会社)やIT関連で情報通信を担う企業、地方自治体、北海道に工場を構えている製鉄会社や製紙会社など多岐にわたる。

鈴木:
「機販の取り扱い商材の主力は電線ケーブルや変圧器などの電設資材、続いて情報ネットワーク用のスイッチングハブなどの情報通信機器、非常用発電機や無停電電源設備(UPS)といった産業機器、公共施設向けだとポンプや計測機器などですね。用途は様々でオフィスビルや病院、学校、商業施設などの建物はもちろん、電車や地下鉄、道路、トンネル、ダム、珍しいところは炭鉱でも。」

梅田:
「端的に言えば、電気が使える場所、インターネットができる全ての場所で弊社の取扱製品が使われていますよね。」

と語られる通り、同社の商材がカバーする領域は広範囲に及ぶ。

電線ケーブルと受電盤に収まった変圧器

ダムに設置された機側操作盤と水中ポンプ


②エンジニアリング事業

エンジニアリング事業は、公共の水道施設(浄水場・配水場)でポンプや計装、監視設備などを中心にそれらの設置工事や保守管理、設備更新の提案まで行っている。ロードヒーティング設備においては設計から施工、修理まで対応している。
また、情報通信関係でも各種企業の情報ネットワーク用の機器と一緒にそれらの設置工事や電源工事も行うなど、地域のインフラを直接支える重要な役割を果たしている。

梅田:
「サブコンさんから工事のご注文をいただいたり、競争入札を経て自治体と契約して浄水場や配水池などの水道施設の電気や計装関係の更新工事を手掛けたり。
提供しているサービスも幅が広くて、路面の凍結を防ぐロードヒーティングの敷設工事、産業機器のメンテナンス、計装機器や情報通信設備の設置や配線工事など多くの分野にまたがっているので説明が難しいのですが…。」


冬の北海道には欠かせないロードヒーティングユニット


鈴木:
「エンジニアリング事業は、当社SE(System Engineer)が工事現場を管理監督し、協力会社さんの作業によって進められています。
SEの仕事は、日常では目立つことがない一方、私達の生活にも欠かせない部分を担っています。」

現場作業を監督する同社のSE


この事業が果たす社会的役割は大きく、設備が正常に動くことで暮らしの安全や快適さが確保される。
当たり前のように感じる生活の裏側を支えているのがエンジニアリング事業で、北海道の地域社会の生活基盤を守る重要な仕事だ。


札幌本社に加え、室蘭営業所と東京オフィスが担う使命

同社には札幌本社の他に「室蘭営業所」と「東京オフィス」という二つの営業拠点がある。

①室蘭営業所

鈴木:
「室蘭は地元に事務所を構えている企業を大切にする文化が根強く残っているようで、この背景には地場産業との深い結びつきがあると聞いています。」

梅田:
「室蘭営業所のお客様は製鉄所やその関連企業が多くて、産業設備も他の工場に比べると大型のものが多いですよね、それらの機器の整備案件なども大がかりなものが多い印象です。
最近では室蘭営業所から函館エリアまでも営業圏としてカバーしているので頼もしいですよね。」

鈴木:
「提供している商材も製鉄所や造船所で使用される特殊な設備や資材が多いですね。
製鉄所は溶鉱炉の周りなどの高温環境下で稼働する設備が多いので、耐熱性に優れたケーブルとか、造船所は船舶専用の電線ケーブルとか特殊な製品が多いと思います。」


製鉄所が多い室蘭市


土場:
「現在の室蘭営業所長は宮本さんですけど、室蘭で築いた人脈を活かして機販の東京オフィス開設を実現した立役者ですよね。」

鈴木:
「宮本さんはバイタリティ溢れる人間で、お客様からの信頼も厚くて、猪突猛進を地で行くタイプ(笑)
室蘭営業所は地元出身者が多く、長年培った信頼関係をベースに少人数ながらも高いパフォーマンスを発揮してくれています。」


室蘭商工会議所から創業50年事業所として表彰された室蘭営業所のメンバー


室蘭営業所は、地元の信頼を武器に商材とサービスを提供して地場産業を支える地方拠点となっている。


②東京オフィス

東京オフィスは、北海道に本拠地を構える同社にとって本州展開の礎となっている。「なぜ東京に営業所を?」という問いに対して次のように語ってくれた。

鈴木:
「室蘭営業所の取引先のお客様が転勤で東京に異動された際に『東京でも北海道機販と取引を続けたい』という大変ありがたいお話しを、営業所長の宮本にご相談頂いたのがきっかけです。
将来的に人口減少などで北海道の市場も縮小していくのではないかという懸念もある中、このお話しは新たな販路開拓として東京進出にチャレンジする追い風になったと思います。」

梅田:
「東京でのお客様の中心は大手製鉄業やプラント工事を得意とする企業ですが、本州では一つのプロジェクトで扱う電線ケーブル類の物量も非常に多くて、北海道のそれと比べるとスケールの大きさを感じます。」


北海道から東京へ新たなチャレンジを展開する


主な商材は、室蘭営業所同様の耐熱性や耐久性に優れたケーブルや、工場向けの電気設備資材が中心で、首都圏ならではの大規模な案件に対応する。
東京オフィスの開設は、単なる営業拠点の拡張ではなく同社の未来を示す試金石でもある。

土場:
「東京オフィスを立ち上げた宮本さん(室蘭営業所長兼務)は、最初たった一人で東京に乗り込んで、オフィス探しからなにから全部ゼロから始めちゃいましたよね。すごい人だなぁと思って…。」

鈴木:
「将来的な北海道の市場縮小という懸念に、宮本さんの『本州にも需要がある』という熱を帯びた提案が経営層を動かし、今では既に重要な拠点となっています。
東京勤務の若いメンバーも宮本さん指導の下、少数精鋭でしっかり成長してくれています。」


東京オフィスとそのメンバー


東京オフィスは、新たな市場開拓という挑戦と同時に将来に向けた重要な役割を担っている。


他社に真似のできない“一体感”のある企業文化

同社の企業文化は“地元との信頼関係を大切にしながら、一つひとつ誠実に応える”という姿勢に基づいている。この文化は、社員一人ひとりの仕事に対する責任感とプロ意識にも表れている。

鈴木:
「北海道機販はお客様との信頼関係を築くことをとても大事にしています。
お客様と一緒になって動いた結果『機販に任せれば何とかしてくれる』と言われるのが、一番のやりがいになっているのではないでしょうか。」

その言葉通り、同社は顧客との信頼構築が土台にある。
また、社員同士のチームワーク、“一体感”も大きな特徴だ。営業、SE、営業事務など、それぞれの部門が連携し、顧客の多様なニーズに応える体制を整えている。

社員同士の“一体感”が同社の文化を特徴づけている


土場:
「今の機販は41名なので決して大きな組織ではないですけど、だからこそ自然と『自分たちでなんとかしなければ』という意識が強いのかな、と思っています。
それが結果的に部門を越えた協力体制にもつながっているんじゃないかと…。
あと若手社員も現場に足を運んでお客様との接点を通じて経験を積んでいるのかなと感じます。」

鈴木:
「机上では理解できないこともたくさんありますからね。先輩方と一緒に現場を回って実際に使われている設備(取扱製品)を見て製品の大きさを知る、電線ケーブル類も倉庫の荷姿と現場で敷設した後ではまったく違う形になることを知るなど、お客様や協力会社の方からも教えて頂く文化が根付いていると思います。」

地域社会や顧客との結びつきを軸に、社員一人ひとりが主体性を持ちながらも“一体感”をもって働く、それが同社の企業文化だ。


機販は現場を知るエキスパート集団

同社の強みは、地域密着型の営業スタイルと、高度な専門性を併せ持つ点にある。


SE部はご要望に応じて設計も担当する



資材の提供だけでなく、設置・保守・メンテナンスといった付加価値の高いサービスをワンストップで提供することが、顧客からの信頼獲得につながっている。
また、大手メーカーの特約店として、高品質な製品を取り扱える点も差別化ポイントだ。
製品の品質はもちろん、特約店ならではの情報や技術サポートが提供できるため、顧客からの信頼を集めている。

鈴木:
「納入した製品の故障などのトラブルが起きてしまった時、やはりお客様からはお叱りを受けます。実際には色々な事情で対応が遅くなってしまう事もありますが、そんな時でもメーカーの人達と一緒に客先を訪問して丁寧に説明することで、信頼回復に努めています。
常にお客様に寄り添う営業姿勢も強みの一つだと思っています。」

梅田:
「こうした強みを支えているのは、社員の幅広いスキルや柔軟性だと思っています。
営業もSEも営業事務も、お客様からの要望は社内だけじゃなくメーカーさんも巻き込みながら可能な限り対応する。そういう経験が蓄積されているのは大きいんじゃないかと。」


若手も現場で学びながら成長する



機販の社員は皆、現場を知るエキスパート集団であることが大きな武器となっている。最新の技術や製品を取り入れ、付加価値の高いサービスを提供する。この姿勢が、競合他社と比べた大きな強みなのだ。


山一ハガネ社員が感じた「北海道機販」という会社

同社の強さは、単に商材の豊富さやサービスの幅広さだけでなく、それを支える社員一人ひとりの責任感と現場に根ざした対応力にあります。

どの社員も自分の役割を超えて顧客のために最善を尽くす姿勢を持ち、それが会社全体に共有されている。こうした姿勢が「他社に真似のできない“一体感”のある企業文化」を醸成していると感じました。
「お客様のために」社員同士が互いに連携し、「お客様のために」部門、会社の枠を超えて協力することで価値提供が最大化される。この“一体感”は、北海道から東京オフィスへの展開という新たな挑戦にも現れており、さらなる成長を遂げる大きな原動力になっています。

この素晴らしい企業文化を私たちも見習い、グループ企業として共に支え合って、それぞれの強みを活かしながら新しい可能性を切り開いていきたいと思いました。

山一ハガネを訪問するお三方。少しずつ、だが確実に絆は深まっている


の物語”は、まだ序章にすぎない。
続きは「一ハガネ」と「北道機販」が共に紡いでいく。