アジアから世界へ!未来を創る山一ハガネグループ③:Yamaichi Special Steel(Thailand)Co., Ltd.編


Yamaichi Special Steel(Thailand)
Managing Director 
谷口 敏一


Yamaichi Special Steel(Thailand)
General Manager
肥後 裕也

タイから世界へ挑むYamaichi Special Steel(Thailand)※以下:YST

谷口:山一ハガネは東南アジア市場の重要性を早くから見据え、2003年3月にタイに現地法人を設立。
主に生産材・工具鋼の輸入販売、保管、配送、通関業務の代行をメイン事業として行ってきました。

タイは東南アジア最大の自動車生産国であり、日系メーカーも多数進出しています。
近年、特に電気自動車(EV)市場が急速に拡大しており、2024年にはEVの販売台数が前年比約40%も増え、10万台を超えました。
こうした市場動向を踏まえ、私たちは材料の供給を通じて、タイの産業を支える存在でありたいと考えています。

輸入・輸出
通関
保管
配送

肥後:YSTは材料供給だけでなく、現地での技術サポートや納期対応の柔軟さも強みです。
たとえば、ある取引先から「通常より短納期で材料が欲しい」と相談を受けた際には、在庫状況をすぐに確認し、現地ネットワークを活かして対応することもあります。
こうした柔軟さが、お客様との信頼関係構築に繋がっていると感じています。

谷口:タイの自動車産業は、米国の関税政策や中国メーカーの台頭といった課題にも直面していますが、私たちはそれをチャンスと捉えています。
EV部品に適した新しい工具鋼の提案や、現地サプライヤーとの連携強化などを通じて、変化の時代においても価値を発揮できる拠点を目指しています。

チーム“YST”の強み

YSTの明るく愉快な仲間たち

谷口:YSTは、日本人3名、タイ人スタッフ8名の計11名という少数精鋭です。
人数が少ないからこそ、目標を共有した際には全員が即座に動けるのが強みです。

肥後:スタッフはみんな明るく前向きで、責任感も強い。
日本人とのコミュニケーションもスムーズで、毎日活気のある雰囲気で働けています。
タイの方々は日本人に親しみを持ってくれているので、現地での業務も非常にやりやすいです。

谷口:語学力の面でも強みがあります。
日本語・タイ語・英語に加えて、インドネシア語を学んでいるスタッフもおり、ASEAN諸国への展開にも柔軟に対応できる体制が整っています。
実際にベトナムからの引き合いも増えており、将来的には広域営業拠点としての展開も視野に入れています。

マネージャー肥後のタイ赴任への経緯、感じるやりがい

肥後:私は幼少期から大学までをタイで過ごし、大学卒業後に山一ハガネへ入社しました。
「いつかタイに戻って働きたい」という思いから、現地に拠点を持つ山一ハガネに応募しました。

笑い話になりますが、当時の私は日本の常識に疎く、面接では“髑髏マークのベルト”で臨んでしまいました…(笑)。
寺西社長に面接いただいたのですが、初対面からフィーリングが合い、「この人のもとで働きたい」と強く感じたのが入社の決め手です。

入社後は日本で4年間営業を経験し、実績を積んでからタイへの赴任が決まりました。
赴任当初は尊敬できる上司に恵まれ、現在も連絡を取り合い、拠点間での情報交換を続けています。

YST経理チーム

現在は営業業務に加えて、人事・総務・経理などの管理業務も担当しています。
実務はスタッフに任せつつ、全体のマネジメントに関わることで、組織の力を引き出すことを意識しています。

小規模な拠点だからこそ、メンバーとの距離が近く、成果も悔しさも共有しやすい環境です。
新規顧客を獲得できたときには、チーム全体で喜びを分かち合える、そんな瞬間が、私にとって大きなやりがいになっています。

タイでの営業のリアル

谷口:日本では、特に大手企業はアポイントを取ることからハードルがあり、紹介がないと会ってもらえないことが多いです。
もちろん、電話でのアプローチはほとんど通じません。

その点、タイは営業に対してオープンな文化があり、飛び込みでもアポイントが取れるケースが多い印象です。
大手企業でも垣根が低く、受付から担当者まで繋いでもらえる確率が高い。

まず「会ってくれる」文化があることで、営業としてのやりがいが大きくなります。
もちろん、取引に繋がるとは限りませんが、勝負のスタートラインに立てることは営業にとってはとても嬉しいことです。

YST営業チーム

肥後:一方で、商材に対する競争は日本以上に激しいと感じます。
日本ではサプライチェーンにより仕入先がある程度固定化されていますが、タイでは韓国・中国・台湾・インドなど多国籍メーカーが競い合い、価格競争も非常に厳しいです。

私たちが扱う特殊鋼でも、品質・価格・納期すべてが比較され、その中で選ばれなければ残れません。
言い換えれば、純粋に営業力と提供価値が問われる市場と言えます。

谷口:ただ、その分、提案の質やスピード感がそのまま成果に繋がる面白さもあります。
タイでの営業は、自分のスキルを実践的に磨ける貴重な経験だと実感しています。

広がるASEANマーケットへの視点

谷口:本社であるYSSには、材料・切断・加工・熱処理・仕上げ・測定までを一貫して行える製造体制、通称「ファクトリーモール」があります。
YSTには自社工場がないため、販売拡大には現地サプライヤーとのネットワーク構築が不可欠です。

現在、切断や加工を依頼できる協力会社を積極的に開拓しており、工程ごとに信頼できるパートナーと関係を築けるよう取り組んでいます。
私たちが目指しているのは、工場を持たずとも、複数のサプライヤーと連携することで「一貫体制」を実現するYST版「ファクトリーモール」の構築です。そうすることで、お客様から、材料の調達~加工までをワンストップで任せてもらえる、そんな頼られる存在になりたいと考えています。

また、営業エリアもタイ国内にとどまらず、ベトナムやインドネシアなど周辺国も視野に入れて活動を進めています。
語学力に長けたスタッフも揃っているため、ASEAN全体をカバーする営業拠点としての役割も見据えています。

そのためにも、販売代理店の域を超え、調達・加工・納品までをトータルでコーディネートできる“提案型商社”への進化が、今のYSTにとっての大きな挑戦であり、使命です。

それぞれの拠点グループと協力し、営業エリアを広げることを目指す

チームで味わう“成功体験”の喜び

肥後:特に嬉しいのは新規顧客獲得ができたときです。
11名という人数のため、一人ひとりの働きが全体に影響します。

ですから、その時のチームワークの成果が形になって出たときには一緒に喜び合うことができ、喜びは倍増します。
こうした一体感は、少規模ならではの魅力ですね。

もちろん、うまくいくことばかりではありません。
でも、そんな時こそチームで振り返り、「次に活かすには?」と前向きに考える文化も根付いています。
失敗を次の成功へのヒントに変える姿勢が、組織の強さにもつながっていると感じます。

後は、試行錯誤の末に得た成果に対して、お客様から感謝の言葉をいただけた時に、仕事のやりがいとチームワークの価値を実感します。

仲間がいるからこそ、チームワークの価値を実感できる

山一ハガネグループの魅力

肥後:入社当初から、山一ハガネには「否定しない文化」があると感じています。
トップが現場の声に耳を傾けてくれますし、距離感も近いです。

先ほど、寺西社長との面接のエピソードを話しましたが、「社長だけは絶対に裏切れない」という思いが私にはあります。

ある時、寺西社長に「社長の仕事とは?」とお尋ねすると、「従業員が働きやすい環境をつくること」だと答えられました。
その言葉通り、社員はもちろん家族まで大切にする姿勢があるので、現場も安心してチャレンジできているのだと感じています。

谷口:山一ハガネグループの強みは、生産材として帯鋼・線材・棒鋼の3種類すべてを扱えている点にあります。これが差別化に直結しています。
さらに、先述のYST版「ファクトリーモール」構想や、AM(Additive Manufacturing)事業など新領域への挑戦も進行中です。

YSSのIT部門との連携もあり、拠点間の情報共有もスムーズになってきています。
YSV(ベトナム拠点)との協業も進めるなど、アジア全体を見据えた展開に厚みが出始めています。


帯鋼・線材・棒鋼 全てを取り扱えるのは山一ハガネの強みだ

タイという国のこれから

谷口:私はタイに来て、街の発展にとにかく驚きました。
特にバンコクは、エリアによっては日本以上に整備されていて、交通インフラや商業施設の充実ぶりには目を見張るものがあります。

かつて“観光立国”としての印象が強かったタイですが、今ではEVやハイテク産業の誘致にも積極的で、国全体が“工業立国”としての新たなフェーズに入っていると感じています。

肥後:そうした動きを支えるのが、政府によるEV普及策や、企業誘致のための税制優遇などです。
実際に、私たちのお客様の中でもEV関連の部品製造に取り組む企業が増えており、市場全体が少しずつ確実に動いているのを実感します。

工業の発展が進むタイ

谷口:この国は、経済的にも文化的にも“受け入れる力”が非常に強いです。
現地の人々も前向きで柔軟性があり、そうした国民性が産業発展の土台になっているのではないかと思います。

今後もこの地で事業を展開していくうえで、単に鋼材を売るだけでなく、“この国のモノづくりを支える”という視点を持ち続けたいです。

きなタイ料理

肥後:日本で食べるタイ料理と本場で食べるタイ料理はやはり少し違い、日本では日本人好みに甘めになっている印象です。

私が一番好きな料理はパパイヤサラダと言われる、ソムタムです。
ソムタムには、いくつか種類があり、その中でも私が好きなのは東北地方のソムタムプーパラーです。

慣れていない人が食べると、50%ぐらいの確率でお腹を壊してしまう食べ物です(笑)。
辛いのに加え、発酵させた調味料や、生のサワガニが入っているので、たまにあたってしまいます。

ですが、それと一緒にお酒を飲むのがたまらなく美味しくて、大好きです。

左から順にタイ料理「ソムタムプーパラー」「クイッティアオ」「ガパオライス」

谷口:私は辛いのが苦手なので、日本にいたときはタイ料理を全く食べたことがなかったです。
タイ料理は全部辛いイメージがあったのですが、現地に来て、辛くない料理もあることを知りました。

私はタイのラーメンとも形容される麺料理クイッティアオが好きですね。
ベトナムのフォーみたいな感じで美味しいので良く食べます。

あとは定番のガパオライス。辛さが決められるので、辛さゼロで頼んでいます(笑)。

2人はユーモアさも忘れない

これからのYST、これからの自分たち

谷口:今後のYSTは、生産材と工具鋼、それぞれの基盤をより強固にすることが第一です。
製造機能を持たないYSTだからこそ提供できる価値が必ずあると思っています。

せっかく海外にいるからこそ、既存事業に限らず“タイ発”の新しい事業にも挑戦してみたいという思いがあります。
当社にはAMやCASTなど、他社にない強みもありますから、現地での出会いやニーズから生まれる新たな可能性に、常にアンテナを張っていたいですね。

肥後:会社としては、タイ拠点を今の倍以上の規模に成長させ、売上も3倍に伸ばすことを目標にしています。
そのために、現地スタッフの採用・育成にも力を入れて、チーム力を強化していきます。

個人としては、仕事と家庭の両方を大切にしながら、地に足のついた日々を積み重ねていきたいです。
家族との時間が何よりのエネルギー源なので、それがあるからこそ仕事にも全力で向き合えています。

谷口:海外で働くのは簡単ではありませんが、自分を成長させてくれる機会が多く、日本では見えなかった景色が見られます。
まだまだこれからですが、ここタイから、世界に通じる価値を届けられるよう、仲間と挑戦を続けていきます!

YSTだからこそ提供できる価値をみつけていきたいと語ってくれた