工具鋼事業の未来を担う、マネージャー2人が語る山一ハガネの魅力!!

工具鋼Group 直需Sectionをけん引する営業のお二人、鈴木恒宏チーフマネージャーと酒徳嘉洋マネージャーに直撃インタビュー!

株式会社 山一ハガネ
工具鋼Gp 直需Sec. チーフ・マネージャー
鈴木 恒宏

株式会社 山一ハガネ
工具鋼Gp 直需Sec. マネージャー
酒徳 嘉洋

山一ハガネのファクトリーモール概要

1. 素材供給
  金型や治工具に使われるすべての工具鋼を豊富に用意
  独自の販売管理システムと自動ラックが連動し適正在庫管理
2. 切断:
  手作業による切断のほか、3台の自動切断機を備え24時間自動切断
3. フライス加工:
  切断された材料を、フライス盤で取りしろを残しながら面削を行うプレート加工
4. 熱処理/最終処理:
  冷間工具鋼を主軸に「硬さ」「変寸」「歪み」を調整
  素材が持つ特性を最大限に引き出す
  経年変寸を抑制する新熱処理方法「LSP処理」を独自開発
  仕上加工後に行うことで、更に完成品の精度を高める
5. 仕上げ加工:
  加工環境を恒温恒湿管理
  ジグボーラー、マシニングセンターで1μm単位を制御する高精度加工
6. 測定:
  ISO17025試験所認定された三次元測定器と測定技術で寸法保証
7. 物流:
  自社特定貨物運送会社である山一物流のサポートの下、お客様の生産活動に貢献する配送

■まず最初に、山一ハガネのファクトリーモールについてご説明いただけますか?



酒徳:山一ハガネはもともと、鋼材を販売する材料屋としてスタートしました。そこから将来的に、この材料にどういった付加価値を付けて販売していくべきかを考え、素材から切断、フライス加工(一次加工)、熱処理、仕上げ加工、物流というところまで、一貫して一つの拠点ですべて担うというコンセプトを打ち出しました。それを、ファクトリーモールと呼んでいます。

鈴木:わかりやすいイメージとしてはショッピングモール。そこへ行けば何でも揃うというところから来ています。山一ハガネに注文すれば、すべて解決できますというコンセプトを、ショッピングモールからの造語でファクトリーモールと呼んでいます。

酒徳:他社にも機械加工や熱処理を行っている材料屋さんはあります。ただ、それを一つの拠点で全部行っているところは、全国探してもほとんどないと思います。

鈴木:中部地区でこの規模でやっているところは知る限り他にはないですね。

私が入社した頃は、一部材料をフライスする一次加工までは行っていましたが、それだけではどうしても値段の問題になってしまい、どれだけ安くできるかが勝負になっていました。その中で、市場が付加価値を求めてきていた背景があり、山一ハガネがファクトリーモールという付加価値をつけて提案・販売ができるようになったことは、他社との営業の差別化に繋がりました。山一ハガネに発注することによって1回で、ワンストップで手配が済む。そこがかなり大きなポイントになっていると思います。

酒徳:お客さまによっては、材料はここで買うけど、機械加工は他社で、次の熱処理はまた違う所でと、それぞれの会社に発注を振り分けていた手間が、山一ハガネに頼めば一括で完結する。購買窓口を一つに集約することができるのも、ファクトリーモールの魅力のひとつだと思います。

■工具鋼の素材における山一ハガネの強み、そして魅力を教えてください。


鈴木:プロテリアル様の特約店でこれだけ広大な敷地に2000トン以上の在庫を所有している材料屋は、中部地区ではここだけです。関東・関西地方では、プロテリアル様直系の子会社が材料販売を行っていますが、中部地区は山一ハガネに任せていただいています。他にない豊富な在庫量を所有していることで、お客様に合わせた特急対応ができる。それが強みなのかなと思います。同じ敷地内にプレート工場があるので、切断してすぐにフライス加工ができる環境も強みです。

また、金属材料は鍛造していくと繊維状の組織が一定の方向に延びる流れがあります。それをファイバー方向(圧延方向)と呼ぶのですが、山一ハガネでは、このファイバー方向も厳しく管理しています。ファイバー方向は金型の寿命にも影響するため、この管理を行っていないと、ファイバー方向指定の注文があった場合に、お客様の要望に対応できません。実際、ファイバー方向の管理をしていない材料屋さんもたくさんありますので、そこも安心して山一ハガネに任せていただける点だと思います。

ファクトリーモールの一つの機能である熱処理における山一ハガネの強みとはなんですか?


鈴木: まず第一に、山一ハガネの熱処理工場であるHCPダイテック熱処理センターの特徴は、Silent & Clean です。熱処理工場のイメージとして、油汚れや騒音がひどいという印象をお持ちの方も多いかと思いますが、山一ハガネの熱処理センターでは、静か(Silent)で、きれい(Clean)な環境で熱処理を行っていることが特徴として挙げられます。

いろいろな熱処理メーカーさんがある中、それぞれやり方が違うので、やはり熱処理のクオリティにも差があります。ですが、山一ハガネは材料屋ということもあり、材料の特性を100%引き出すことが熱処理工程では重要だとわかっていたので、材料メーカーさんからしっかり指導を受け、材料の特性を生かせる熱処理技術をきちんと修得したところが強みなのかなと。

他には、薄い板に熱処理をすると歪んでしまい、歪んでいればいるほど、熱処理工程後の研磨加工がとても大変になります。山一ハガネでは、歪んだ製品にプレス矯正を加え、歪み量を減らす調整を実施しています。そうやって研磨加工の時間が短くなるよう、お客さまの後工程を考えた熱処理を行っています。

また、社内で熱処理を行う強みとして、材料屋である利点を活かし、経年変寸(時間の経過と共に起こる寸法変化)に関する様々なテストを行い、熱処理の技術を向上していることが挙げられます。山一ハガネにはこうした過去の分析データに基づいたノウハウと技術があるため、どの温度帯でどうやれば経年変寸を軽減できるかを理解しており、変寸を最小限に抑えることができます。営業としては、材料の手配から切断に加えて、熱処理もでき、さらには熱処理での歪み量や経年変寸も抑えることができるという全ての工程がアピールポイントになっています。

■精密機械加工に関して、山一ハガネの強みを具体的に教えてください。


酒徳:これは、まずは環境です。材料も、温度によって膨張したり収縮したり、温度変化によって寸法が変わります。AEROV(技術開発センター)では、工場環境を1年通して23度±0.5度、湿度60%以下という恒温室の環境下で機械加工することによって、熱変異による寸法変化を抑えています。

あとは日本一と言われる安田工業様のジグボーラーの工作機を豊富に所有しているところです。お客様が工場見学に来ると、「すごい!展示会みたいだ!」と驚かれます。この安田の工作機というのは高級品で、一生に一度でいいから、安田の機械を触ってみたいという技術屋さんもいる羨望の工作機です。機械精度が抜群に高く、値段に見合った高いクオリティをはじき出してくれます。

また、AEROVが同じ敷地内にあるので、短納期対応が可能です。

ファクトリーモールで言うと、一貫して材料から機械加工の依頼も請けていますが、材料、熱処理や加工だけという単一工程の注文も請けています。 15年ほど前、材料販売だけを行っていたときは、他社との差別化が本当に難しかったです。環境が整ったファクトリーモールができ、営業としての攻め口が格段に増えたところは、やはり強みになりましたね。

測定における当社の強みはなんでしょうか?


酒徳:山一ハガネは、ISO17025という試験所認定のISOを持っています。

鈴木:このISOには校正の認定と試験所認定との2種類あり、うちでは試験所認定を取得しています。お客様からお預かりしたものに対して、試験所として測定をし、その測定結果の証明をお出ししています。測定自体は、誰でもできてしまうところがありますので、その数値の信頼性は疑問な部分があります。山一ハガネはその測定結果に対して、世界基準で信頼性を持たせたかった。だから、このISO17025を取得しました。

酒徳:高精度の良いものを作ったときに、その精度に対する保証体制として、測定結果が正しいと言える環境を整えたかったところがありますね。このISOを取得していることで、CMM(自動測定器)で測定した結果の品質が保証できます。このISO17025の証明書がないと対応できない仕事も実際あるんですよ。

鈴木: ISOは海外発なので、ISO17025は海外のお客様とお取引のある国内のメーカーさんから、要求されることが多いです。海外のお客様に出荷される際に、証明書が必要になるようです。

酒徳:あとは、大型サイズで接触式の三次元測定器(高さ3m、幅4m、長さ5m)を所有しているのは、知る限り国内でうちを含めて2社のみです。ですから、測定のみの引き合いもよくありますね。

鈴木:この大型サイズの測定器だと、車や飛行機のエンジン、電車など、今まで大きくて測れなかったものが、そのまま点測定で測れますからね。これは他社にはできない強みだと思います。

では最後に工具鋼事業にかける、お二人の熱い想いをぜひお聞かせください。


鈴木:工具鋼業界は、国内での金型製作が年々減っている中、かなり苦しい業界になっています。ただ、山一ハガネとしては、このファクトリーモールという独自の強い機能を持っているので、強みを活かした営業をしっかり行っていけば、まだまだ仕事は増やしていけると思っています。

今後はEV関係の仕事が増えていく予想があります。ですが、やはりEV関連は超精密金型になるので、実際はどこでもできる仕事ではありません。山一ハガネでは、研磨機やワイヤーカットなどこれまでに設備投資を行ってきていて、EV業界に参入するだけの環境・設備・技術が揃っています。厳しい業界にあっても、私たち営業はこういった武器を会社から与えられているので、営業として応えていくつもりです。

酒徳:鋼材の材料屋として、やはり工具鋼事業は売り上げの生命線になります。鋼材を拡販していかないと、会社としても成り立っていかない。自動車に使われる金型が、縮小傾向にあるという状況で、自動車業界のみに重点を置いていると、リスクが高いことは否めません。山一ハガネとしては、ファクトリーモールの持つ強みを活かし、自動車業界以外にも業態を広げて、幅広いお客様に商品やサービスを提供していく必要があると強く感じています。

自動車業界以外の他業種でも工具鋼は使われていると思いますし、例えば材料だけではなく、機械加工の需要はたくさんあるとか、可能性は色々あると思っています。今の山一ハガネは材料販売だけじゃない。熱処理だったり、機械加工だったりと、提供できるプロダクトやサービスの範囲が広くなっているので、業態の幅は広げて行けるはずです。

また、山一ハガネにはベトナムにYSV(YAMAICHI SPECIAL STEEL VIETNAM)という工場があり、海外で製品を作り調達するという付加価値もあります。アジア圏にはベトナムとタイに拠点がありますから、これからさらに広くグローバルにも展開していけると思います。