メダリストを支えた山一ハガネの設備

——「AEROV」それは、高精度な部品加工と絶対寸法保証の確立で世界に挑戦したものづくりの本拠地

株式会社山一ハガネ

技術開発センター「AEROV」

■AEROVとは

山一ハガネの工場内にいくつもの機械が並ぶ施設がある。
山一ハガネが誇る「技術開発センター・エアロフ」だ。
工作機械は16台あり、荒加工から熱処理後の後加工、3m級の大型の金型から小さく細かな部品まで、さまざまな加工ができる。
この施設では主に金型、自動車部品、治工具などをメインに製作している。

一流の工作機械が並ぶ「AEROV」内部


■AEROVの名前に込められた思い

2013年山一ハガネ内に高精度の機械加工・寸法測定を行える工場が設立された。
山一ハガネ社長の寺西はこの工場を「AEROV-エアロフ-」と名付けた。

AEには5つの意味がある。
『Absolute Environment』…絶対的な環境。構内環境だけでなく、山一ハガネ全体が特殊鋼のファクトリーモールとして絶対的な環境を持つからである。
『Art and Excitement』…技術と興奮。
『Aspiration and Eternity』…永遠の志。夢を持って仕事をしてほしい。
『Automotive Engineering』…自動車・技術
『Aerospace and Energy』…航空機・エネルギー

ROは『Research and Operation』技術開発の研究及び製造のオペレーションの意味だ。

そしてVは『Value』…価値の頭文字のVと、ギリシャ文字のⅤ(5)——AEに込めた5つの意味が集約されている。

『AEROV』の名前には、寺西のこのような思いが込められている。

■AEROVの強み

16台もの機械が揃っているため、あらゆるサイズや寸法精度など、それぞれの条件に合わせた最適な機械加工ができる。
また、山一ハガネは古くから冷間金型用鋼・熱間金型用鋼などあらゆる鋼を取り扱い、同時に加工も行ってきたため材料それぞれの特性に合わせた適切な削り方ができる。
同じ“冷間金型用鋼”である、SLDとSLD-MAGICでも削り方や工具は変わってくるのだ。
エアロフでは、長年培った鋼への知見により、指定された図面の材料・精度によって適切な機械や工具を選び、加工していく。

多種多様な工具を使い分け高精度な加工を実現している

金型の高い寸法精度は、測定によって数値で証明される。
山一ハガネは、測定における世界的な絶対評価基準であるISO17025試験所認定を取得。
三次元測定機と非接触測定器を用いて世界に通用する絶対寸法の保証を実現している。

その大きさに圧倒される3次元測定機 Leitz社「PMM-G」

“高精度の金属加工と世界基準の寸法測定” それらを実現するためにエアロフの工場内は、気温23±0.5℃、湿度60%以下に常時管理されている。
金属は温度変化によって寸法がすぐに伸び縮みしてしまう。
金尺ひとつを取っても、どんなに超高精度な測定器を使って測定しても、金尺の真の長さ、つまり「真の値」を求めるのは不可能だ。
計測する度に、温度や機械の精度によって必ずばらつきが生じる。
そのばらつきは「数ミクロン」という単位なため、目視では確認できないが、機械加工の世界ではその数ミクロンがとても重要なのだ。
「ミクロン」というと、あまりピンとこない単位だが、コピー用紙1枚で約80ミクロンだ。
超高精度な金型では図面に対し、なんと5ミクロンの精度を求められるという。
エアロフでは、このばらつきを1年を通して維持管理し、その範囲を±3ミクロンにまで抑えることで「真の値」に近づけ、絶対寸法の保証へとつなげている。

高精度な寸法測定を行えるエアロフでは、三次元測定機と非接触測定器による受託測定も行っている。
YS-BLADES開発のきっかけとなった、小塚崇彦氏の足型の測定もこの受託測定によるものだ。
この非接触式三次元測定機で実際に小塚氏の足型のデータをとった。

小塚氏の足型を測定した非接触三次元測定機 ヘキサゴン・メトロジー社「WLS400M」


■YS-BLADESの加工工程

では、溶接をしない削り出しのYSブレードはどのようにして作られているのだろうか。

YS-BLADESを製造している横型5軸MC YASDA社「H40i」

エアロフ内には、3軸・5軸・ワイヤーカット……たくさんの工作機械が立ち並ぶ。
ブレード自体はさほど大きくないので機械も小さめだろうと思っていたのだが、案内されたのはかなり大きな機械の前だった。
YASDA製の横型5軸MCで“5軸”を活かし、時間を短縮した加工がされているという。
10㎏のひとつの特殊鋼の塊から、回転させながら約270gのブレードが削り出されていく。

大きな機械の横にある窓からのぞくとブレードが実際に削り出されていた。
しばらく削られる様子を見ていたがあまり進んでいるようには見えない。
四角の塊から、徐々にブレード部分が薄くなっていき、トウやテールなどの細部も削られていく。
1つのブレードの完成までには相当な時間がかかるという。
削り方にも山一ハガネのノウハウが詰まっており、工具の選定と削る順番にポイントがある。
金属の塊からブレードのように薄くて細いものを削り出すのは相当加工難度の高い作業である。
山一ハガネの誇る超一流の設備と技術力により、ブレードをゆがみなく平らに削り出し、さらにフィギュアスケートならではのブレード表面の美しさも実現している。

そうしてできたブレードは、錆び防止のためのメッキがかけられ、ようやく製品として完成する。
世界最高レベルの高精度な部品加工と絶対寸法保証ができるエアロフだからこそ、世界の大舞台で結果を出したYS-BLADESを作ることができたのである。



AEROVの主要設備

工作機械

設備名称製造業者型番保有数稼働範囲
立型5軸MCHERMLEC40U2850×700×500 Φ800
⽴型5軸MCYASDAYBMVi401900×500×450 Φ400
横型5軸MCYASDAH40i1875×700×500 Φ500 12パレ
MICRO CENTER 5軸YASDAYMC430 RT101420×300×250 12パレ
MICRO CENTER 3軸YASDAYMC430 RT101420×300×250
⽴型CNCジグボーラーYASDAYBM1224V11500×2600×1200
⽴型CNCジグボーラーYASDAYBM9150V11500×900×450
⽴型CNCジグボーラーYASDAYBM950V2900×500×350
⽴型CNCジグボーラーYASDAYBM640V1600×400×350
⽴型3軸MCOKUMAMA650VB11530×660×610
⽴型3軸MCOKUMAGENOS M460-VE1762×460×460
研削盤OkamotoPSG12511250×500×575
研削盤OkamotoPSG15811550×800×695
ワイヤ放電MAKINOU53j2550×370×220

■測定器・試験装置

設備名称製造業者型番保有数稼動範囲
接触式三次元測定機ヘキサゴン・メトロジーLeitz PMM-C11200×1000×580
接触式三次元測定機ヘキサゴン・メトロジーLeitz PMM-G15000×4000×3000
接触式三次元測定機ヘキサゴン・メトロジーDEA Global12200×1200×1000
非接触式三次元測定機ヘキサゴン・メトロジーCogniTens WLS400M1
コントレーサー東京精密