SDGs推進企業の福音!奇跡の省エネ技術“CAST(Carbon-nanotube Added Surface Treatment)”

――山一ハガネの“カーボンニュートラル秘伝のタレ”が省エネ技術に革命をもたらす

株式会社山一ハガネ
研究開発Gr
CAST事業Sec. マネージャー
田島 秀春


■Challenge!

山一ハガネでは、広い視野、新しい観点から問題をとらえ、時代を先取る”進取”の精神で常に挑戦を続けている。
そんな山一ハガネで最先端の技術開発を行っているのが研究開発グループだ。
今回、研究開発グループが開発したのが、カーボンナノチューブ※を用いるまったく新しい表面処理技術”CAST(Carbon-nanotube Added Surface Treatment)”だ。

※カーボンナノチューブ:炭素のみで構成されている直径がナノメートルサイズの円筒(チューブ)状の物質。高い電流密度耐性と熱伝導性を備える。

カーボンナノチューブ

■CASTとは?

CASTとは、カーボンナノチューブの分散液を用い、物質に蓮の葉のような撥水性を添加することができる、山一ハガネが独自に開発し、国際論文※として掲載されたまったく新しい表面処理技術だ(特許出願中)。
この新技術を活用することで、省エネが求められるエアコン等の白物家電分野から、発電等の重電分野まで、様々な分野でカーボンニュートラル実現が期待できる画期的な技術なのだ。

カーボンナノチューブの分散液を用いたCAST処理液

※Fabrication of Aluminum/Single-Walled Carbon Nanotube Oxidation Films through CNT-Added Surface Treatment. J. of Surface Engineered Materials and Advanced Technology Vol.12 No.1, 1-13. (2022)


■CASTの原理は”蓮の葉”

CASTの原理は、以下のような蓮の葉の微細凹凸による撥水性の生体模倣技術と同等である。

撥水性を添加できることから、以下のような分野での活用が期待されている。

 

CASTは、先述のカーボンナノチューブの分散液に処理対象(アルミなど)を浸し、電気を流すという容易な処理方法でナノレベルの微細凹凸を形成させることができる。さらに、他のコーティング技術と比較して格段に薄くカーボンナノチューブを添加することができるのが大きな特徴。
シンプルな処理方法のため、大きな省エネ効果を低コストで実現することができる夢の技術なのだ。


■CASTはエアコンの救世主

CASTの撥水性を活かし、まずは冷蔵庫を皮切りにエアコンに導入される予定だ。
2021年の世界のエアコン全体需要は約1.1億台と推定されている。

※出典:一般社団法人 日本冷凍空調工業会

エアコンが設置された建物は現在世界中で約16億棟存在するが、今後30年間で約3倍にもなる見通しとなっている。

※出典:IEA(国際エネルギー機関)2018年調査レポート

そのため、エアコン需要増によるCO₂抑制が急務となり、エアコンの高効率化は世界的な最優先事項となっているが、世界中で研究が行われているにもかかわらずエアコンの消費電力は近年横ばいとなっており、消費電力を低減できる技術が枯渇した危機的状況にある。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ性能カタログ2021年版」
エアコンの消費電力は近年横ばいの状況


それを打破するのがCASTだ。エアコンにCASTを導入することで、結露防止効果により冷却効率が向上し、ここ数年頭打ちだった消費電力を約15%も大きく削減できるようになる。
山一ハガネでは現在、大手家電メーカーと共同で製品へのCAST導入を進め、CO₂抑制に取り組んでいる。
CAST処理液は、山一ハガネが作り出したカーボンニュートラルにおける“秘伝のタレ”なのだ。

アルミ製のエアコン用熱交換フィンにCAST処理を行うことで省電力化につながる


■CASTによる冷却性能向上の効果

以下のようなエアコンを設置した室内を模した実験装置でCAST処理済みのアルミ板と未処理のアルミ板の熱伝達率の違いを検証。


・冷暖房時における熱伝達率の違い

温調器(エアコン)の温度は未処理もCAST処理済みも同じだが、熱伝達率の違いによって室温にこれだけの差が生まれる。


■CAST開発のきっかけ

山一ハガネは創業当時から「社会の役に立つ」という創業の理念を今につなぎ、国際色豊かに広く事業を拡大・展開してきた。研究開発グループもその理念のもと、新技術の開発に勤しんでいた。
そんなある日、田島はカーボンナノチューブ分散液のサンプルを入手。カーボンナノチューブはまだあまり産業で使われていない素材だが、優れた特性を持っている。田島はナノテクノロジー分野における優れた技術者・研究者で、ナノレベルの物質が時として特殊な特性を持つことを知っていた。カーボンナノチューブはその代表例で、これを使えば熱伝導率が良くなる技術が生み出せるのではないかと閃いた。特に、撥水性の添加により、エアコンの省エネ化に使えるという考えは、開発当初からのものだった。山一ハガネの技術が社会貢献につながる、田島の技術者魂が熱く燃え上がった。
ハガネ屋のカーボンニュートラルへの挑戦は、こうしてスタートしたのである。

山一ハガネの技術者が日々研究を重ねている


■Japan Technology - 山一プライド

消費電力などの省エネ技術は、もともと日本の“お家芸”だった。以前、日本は“日本しかできない技術”をたくさん生み出せる国だったが、いつの間にかそうではなくなってしまった。成功体験に固執し、日本の会社全体が保守的になってしまった結果、日本発の新しい技術が生まれなくなってしまった。それが悔しいと田島は語る。
1980年代に、日本の半導体が世界の市場を席巻しはじめたとき、アメリカはこれを危機的状況ととらえ、“商品企画”で勝負するという方向に変えて成功し、今の地位を確立した。
日本も今まで通りでは駄目なはずなのに変わらない、変われないから中国や韓国などのコスト競争力のある国に負けてしまう。だから、そこを変えたい。日本の技術で再び世界をアッと驚かせたい、山一ハガネの技術でカーボンニュートラルを実現し、社会に貢献したい。そう、田島は熱く語った。
YS BLADESで世界一のフィギュアブレードを生み出し、HITAKIで究極の焚き火台を生み出し、そして今度はCASTで世界一の環境技術を生み出す。
Challenge! 山一ハガネの挑戦はこの先も続いていく。