Cognitive Additive(コグニティブ・アディティブ)が叶えるモノづくりの革命
———診断によりAdditive Manufacturingの製造コストを大幅に削減する画期的なツール
株式会社山一ハガネ
事業開発Sec.
南雲 奏大
株式会社山一ハガネ
事業開発Sec.
ポカレル ウペス
■データ通りにいかない3Dプリンター!?
Additive Manufacturing(AM)とは、3D積層造形のことである。
3Dモデルデータを基に3Dプリンターにより金属・樹脂などの材料を1層ずつミルフィーユ状に積み重ねていく。
——こう聞くと、3Dプリンターと3Dモデルデータさえあれば、データ通りの造形物ができあがる…そんな気がしてくるのではないだろうか。
しかし、実際は違う。
造形物の積層方向、材料を積み重ねる密度、3Dモデルデータの形状など、さまざまな要因で造形に失敗することもあるのだ。
また、3Dプリンターの“材料を1層ずつ積み重ねていく”という特性上、3Dモデルデータの非常に細かな部分や表面の滑らかさを実現できない場合もある。
3Dモデルデータを変更し、何度も試作を重ねることでベストな積層方法が見いだせるかもしれないが、それには時間や材料といった、多くのコストがかかってしまう。
■Cognitive Additive(コグニティブ アディティブ)とは?
そこで、そのコストを軽減するために、山一ハガネで開発されたソフトウェアがCognitive Additiveである。
設計した3Dモデルデータが実際に3Dプリンターで造形しやすいかどうか。所有している3Dプリンター・材料でどのくらいのコストがかかるか。また、設計された3Dモデルデータに対し、造形時に表面が滑らかにできるのか、粗くなってしまうのか。
それらを診断するためのツールがCognitive Additiveなのだ。
Cognitive Additiveでインポートできるファイル形式は、STEPファイルとSTLファイルの2種類で、一度に複数のモデルを読み込むことができる。
診断方法はプロトタイプ(試作)とシリアルプロダクション(量産)の二つがある。プロトタイプで一つ一つの造形性を確認した後にシリアルプロダクションの診断を行うという流れだ。
データを読み込むと、次に設定するのは使用する3Dプリンターの種類や材料、ノズルの動くスピードなどの細かい部分だ。これらは造形時のコスト計算やマシンチャージの割り出しに必要なパラメータとなり、初回のみ設定が必要で次回以降は設定値が引き継がれる。
最後に設定するものが、造形に求めるもののパラメータである。
サポート材が少ないことが重視されるのか。3Dモデルデータ通りに作れる“再現性”の高さが重視されるのか。造形時間がかからないことが重視されるのか。
造形するパーツによっても求められる優先事項は変わるだろう。Cognitive Additiveではそういった条件をその都度変更しながら診断することができる。
そして導き出された診断結果を基に3Dモデルデータや3Dプリンターの微調整を行ったり、設計自体を変更したりして、実際の造形に挑むのだ。
■Cognitive Additiveを使用する利点
先述したように、3Dプリンターでの造形はさまざまな要因によって失敗することもある。
造形する前にCognitive Additiveで診断しておくことで、そのリスクを軽減させることができる。
こちらのドラゴンをご覧いただきたい。
滑らかに動いているこのドラゴンも、3Dプリンターによって造形されたもので、造形前にCognitive Additiveで診断をしている。
この場合、サポート材の量を抑えつつ、造形時間も抑えられる配置になるよう、パラメータが設定されている。
その配置の際に、プレートに面するドラゴンの腹側は、データ通りに造形できないためアラートが出て赤く表示されている。実物の写真をご覧いただくと、モデルデータとは異なり平らになっていることがよくわかる。
また、表面の滑らかさの診断でも、青から赤のグラデーションでわかりやすく表示されている。青に近いほど滑らかに造形でき、赤に近い場合は粗くなってしまうアラートだ。
真っ赤に表示されているドラゴンの額あたりは、実物でも滑らかではない。
ほかにも樹脂が固まる際の熱膨張を診断するような、モノづくりに特化したソフトウェアはあるが、このCognitive Additiveでは造形のしやすさや、3Dモデルデータの再現性、コストまで、幅広い面での診断が可能だ。
3Dモデルデータを作成するデザイナーや3Dプリンターを使用するエンジニアだけでなく、見積りツールとして営業マン目線でも活躍できるソフトウェアなのだ。
■なぜ開発されたのか?
3Dプリンターでの造形の失敗。
それは、これまでエンジニアの経験を自身の頭の中やExcelによる関数計算、ほかのツールを組み合わせることによって管理するしかなかったが、手間もかかるし、精度も十分ではなかった。
そこで山一ハガネのエンジニアが自身の経験や世界的論文のデータなどを組み合わせアプリケーション化。
見やすく、分かりやすい画面表示で、誰でも簡単に診断結果を導き出せるようにした。
■山一ハガネの強み
日本のみならず、アメリカなど世界でシェアを広げる“nTopology”。トポロジー最適化のできる3Dモデルデータ作成のソフトウェアだ。
そのnTopologyを4年以上ユーザーとして使用してきた山一ハガネだからこそ、3Dプリンターの造形時の問題に着目。
そこから独自でソフトウェアを開発することができたのだ。
3Dプリンターであらゆるものを作ってきたからこそ、「モノづくり目線」「利用者目線」の優れたインターフェイスになっている。
そして、開発を行ったため、当然使い方も熟知しているのだ。
一見難しいソフトウェアのように思うかもしれないが、見やすいソフトウェアなことに加え、使い方を熟知したエンジニアの丁寧なサポートにより、ユーザーはすぐに使い方をマスターできるのだ。
Cognitive AdditiveはSTLファイルが読み込めるソフトウェアであればnTopology以外でも活用できる。
AMに携わる人ならば一度はこう思ったことがあるのではないだろうか。
「この部品・製品は造形性やコスト的に適しているのだろうか?」 そんな疑問をCognitive Additiveによって可視化。Additive Manufacturingのさらなる可能性を導き出せるのだ。